(株)エイゼット 森谷剛実氏
「機能を重視しましたが“超低床”は、身長157cm のこの利用者さんの場合、現在の身体機能からみても、決め手として少し弱かったかもしれませんね」
最初の提案時には、ベッド脇に設置した手すりを使って起き上がる、という動作に問題はなかった。しかし、身体状況の悪化という変化を受け、モニタリングシートの「今後の方針」に背上げ機能付き特殊寝台の導入を明記したのは、潟Gイゼット所属の森谷剛実氏と潟Jクイックスウィング所属の椎畑和男氏。ともに2Mの特殊寝台を選定した。
森谷氏が選んだのは「楽匠」とプレグラーマットレス。他社より5cm低い超低床ベッドの安全性や、動作のしやすさを重視した沈み込みの少なさなどが選定理由だ。しかし、市川氏の「今まで平ベッドでおそらくスプリングマットレスを使っていた利用者にとってプレグラーマットレスは違和感がないだろうか」という指摘に対しては、「選定する際にいくつかのタイプを本人に試してもらうことで確認、対応します」と柔軟な対応を示した。
(株)カクイックス ウィング 椎畑和男氏(右)
「背上げ時の前ずれ防止、腹圧の軽減を1操作で行えることが機種選定の理由のひとつです」
一方、機能性を重視しながらも少し違った観点から「和夢」を選定したのは椎畑氏。「基本情報に、外観を気にされ、気に入ったものでないと受け入れないとあったので、木目調でデザイン性も高い機種を選びました。私が気に入っているシリーズなんです」とは、特に見た目も大事にしたい利用者にとっては、魅力的な説明かもしれない。
また、同氏はモニタリングシートの「専門相談員による総合確認の結果」と再提案の個別援助計画書の利用目標でこの起居動作の援助によって離床機会を確保すると明記し、利用者と家族に対して伝えている。今まで自分たちの生活になかったものを選ばなければならないのだから、どういった理由、目的で提案するのか、期待できる具体的効果などをわかりやすいかたちで提示することは非常に重要である。
福祉技術研究所(株)代表。福祉用具の技術・研究の第一人者
「入浴や排泄は、実際の本人動作を見て確認することがなかなかできないので、想像に頼らなければならない部分が多く、難しいものです。今回は、各発表者の内容と実際の提案との間に大きな差はありませんでした。今後も、一つひとつの動作を丁寧に検証して福祉用具の選定をしてください。一般論ではなく、“この利用者の場合にどうか”です」
この事例は、その疾患による将来の状況も考慮にいれる必要があること、服薬による日内変動も大きいこと、利用者本人の好みがはっきりしていることなど、非常に難しかったと思います。
さあ、1年後には、この利用者の生活はどうなっているでしょう。身体状況は?気持ちは?予測をどう立てるかは困難ですが…。福祉用具、住宅改修、どんな提案をしましょうか。