福祉用具は、加齢に伴い心身機能の低下した高齢者の自立を支え、介護する方の負担を軽減します。そして、介護保険では、心身状態や環境の変化に応じて、その方に最適な福祉用具が提供されるよう、レンタルを原則的な給付方式としています。
福祉用具は、高齢者の自立支援及び介護負担の軽減に役立ちます。しかし、使い方が正しくなかったり、身体状況に合わない福祉用具を使う、又はメンテナンスを怠ったりすると、事故が発生してしまうケースがあります。それを防ぐために、福祉用具専門相談員は普段から導入時に利用計画を立て、それに基づく定期の「モニタリング(訪問確認)」を行っていく必要があります。使用状況の確認や、心身状態・生活環境に変化がないか、福祉用具に異常がないかなど確認・点検を行っていくことで、事故の可能性に気づき、未然の防止につなげていくことができるでしょう。
福祉用具個別援助計画書とモニタリングシート
「福祉用具個別援助計画書」は、アセスメントによる課題分析の上、福祉用具としての利用目標を設定し、これを実現するための計画書。ケアプランの援助目標に基くものです。また「モニタリングシート」は、実際のサービス提供後、この利用目標が達成されているか、利用状況の確認を行なうためのシートです。達成されていない場合、再アセスメントを行い、計画の見直し、適切なサービスの提供につなげます。現在、法律で作成の義務はありませんが、サービスの質の向上のため、一部の関係者が作成しています。適切なサービスの提供環境の整備のためにも、保険者やケアマネジャーなど関係者の協力が必要といえます。
一般の商品、例えば電化製品であれば、メーカーや販売店は、ユーザーの要請に応えて点検や修理を行います。しかし、福祉用具の利用者は一般の消費者とは異なり、心身の機能が低下し、一部には判断力が著しく低下した方もいるなど、特別な支援を要する消費者です。従って、福祉用具専門相談員は、利用者の要請を待つだけではなく、積極的に利用者と関わりをもち、安全を確保していかなければなりません。定期のモニタリングが必要なのは、このためでもあります。本会には、モニタリングシートを使った関係者から事故防止に役立ったという意見が多数寄せられています。また、保険者が介護給付適正化事業に活用する事例など、様々な利用方法も出てきました。本会では、今後とも普及・啓発に努め、少しでも事故の防止に役立ち、もって高齢者の福祉の増進に貢献していきたいと考えています。
市町村(保険者)は、現在、介護給付の適正化事業に取り組んでいます。モニタリングシートの書式や、これを使ったモニタリング作業は、サービスの質の確保を目的に、保険者が行う介護給付適正化事業に活用されている例もあります。
東京都・世田谷区の事例(福祉用具専門相談員のモニタリング能力を活用)
世田谷区では、介護給付適正化事業の一環として、平成21年度には「住宅改修に係る利用者宅訪問調査」、平成22年度には「福祉用具購入に係る利用者宅訪問調査」を実施。前者は福祉住環境コーディネーターの建築士等で構成する地域団体に委託。一方、後者は全国福祉用具専門相談員協会に委託し、同会東京ブロック会員の「福祉用具専門相談員」を調査員として、年間50件の調査を実施しています。調査では、区の担当者、ケアマネジャー、福祉用具販売事業者とともに、調査員が利用者宅を訪問し、利用状況を調査・確認した上、区担当者が行う助言・指摘等の技術的な補助を行っています。訪問調査シートは、同会が開発した「ふくせんモニタリングシート」をベースとした独自の仕様。なお、調査員は一定の要件に該当し、かつ同会が行う「訪問調査員研修」を受講するなど、調査員の質も確保している。
神奈川県・茅ヶ崎市の事例(「ふくせんモニタリングシート」の書式を活用)
茅ヶ崎市では、平成22年度の介護給付適正化事業の一環として、同市の被保険者に特定福祉用具を販売した事業所の中から6事業所を選定し、モニタリングの実施と、その結果を報告するよう求めています。提出期間は通知を発出した日から約3ヶ月以内。モニタリングの対象となるのは、当該事業所のご利用者のうち特定福祉用具を販売した30人。報告にあたっては「ふくせんモニタリングシート」(全国福祉用具専門相談員協会が開発)を使い、原本を事業所に保管し、写しを同市に提出。なお、モニタリングの実施にあたっては、同市が作成した協力依頼文を渡して、ご利用者の同意を得たうえで行っている。