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水越良行(みずこし よしゆき)氏
(株)ヤマシタコーポレーション 府中営業所 主任。キャリア10年
――水越さんが調査員としてうかがった中には、選定上、疑問と思うような給付対象、状況はありましたか。
水越 ◆そういうものはありませんでした。ただ、メーカーに提言すべきポイントが出てきたというのはありましたよ。
バスボードなんですが、ターンテーブルで方向転換をしてそのままスライドするもの。使いこなすと便利ですが、スムーズに動きすぎるんです。その動きの点から使い方には特に注意が必要な製品なのです。ターンテーブルの部分はボード本体に固定されていないため、簡単にはずれます。ご利用者やご家族がそれらの特徴について、導入時にしっかり説明を受けていたのか、ということはチェックポイントですね。
――製品を取り替える必要性はなかったのですか?
水越 ◆「スライドする」というのがこのご利用者にとってのポイントだったんです。ちょうど身体介護でヘルパーさんがいらしていて、「実際に入浴介助時に使うのは私だから」と、活発な意見交換ができたのは収穫でしたね。
そのまま継続して使用していますが、調査が入ったことによって、改めて注意を喚起する、第三者の目でみたチェックポイントをお伝えする、助言することができました。
――何かあったらすぐに別のものに取り替えるということではないんですね。
水越 ◆必要なものならば、改めて使用する際の注意を促し、安全に使えるような配慮をする。それが調査員に求められている役割だと思います。
――不適正なもの、というわけではないと。
水越 ◆車いすの付属品であるクッションが単体でレンタルされているということがありました。通常のいす用クッションとして使用していたんです。生活の利便という点ではいいと思いますが、介護保険制度におけるレンタルとしては不適正ですよね。事情を聞いてみたら、ケアマネジャーさんが特に意識していなかったということでした。
――それでは、その福祉用具はどうなるのでしょうか?
水越 ◆区担当者から、本来どうなのかを説明し、ご理解いただくことになるんだろうと思います。どう対処するかは保険者の判断でしょうから、その後の取り扱いは残念ながらわかりません。その状況がおきた原因はさまざまでしょうが、提供した事業者の知識あるいは意識が足りなかったということが多いのではないでしょうか。
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本山秀昭(もとやま ひであき)氏
(株)やさしい手 住環境事業本部。キャリア6年
「行政の方には、ケアマネジャーさんに福祉用具導入についての制度等を助言するのも福祉用具のプロである福祉用具専門相談員の仕事だと言われました」というのは、本山秀昭氏だ。
――本山さんが調査員としてうかがった中には、特に問題になりそうな給付対象、状況はありましたか。
本山 ◆調査にうかがった中では、目標の達成度はほぼOKでしたが、その場でトイレの座面高の調整を行ったケースがありました。ポータブルトイレからの立ち上がりが少しつらそうだったんです。おそらく初期設定のままの高さだったんでしょう。少し高くすると立ち上がりやすくなりますよ、ということで調整させていただきました。それと合わせて、立ち上がり支持用手すりのすべりどめの位置が適切でなかったため、それも直しました。販売事業者も同席していますから少し言いにくい面はありましたが。こちらは途中でずれてきてしまっていた可能性もありますね。
――福祉用具の取りつけ方がまちがっていたものがあったということですが。
本山 ◆ レンタル品もあわせて確認したところ、"たちあっぷ"のベース部分が表裏逆に取りつけらていた、というケースがありました。本来固定されて動かないはずのものなのに、きちんと固定できず危険な状態でしたので、指摘し、セッティングし直させていただきました。
――ご利用者本人は何かおかしいと、気づかれていましたか?
本山 ◆特にここが、とは思われていなかったようです。提供する側のモニタリングあるいは設置後のチェックが不十分だったのではないでしょうか。