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福祉用具の事故防止に向けた取り組み

福祉用具関係者の皆様へ 介護ベッド用手すりの安全点検
モニタリングと事故防止
職種間連携による事故予防
適正化と事故防止
福祉用具における介護給付適正化事業のため調査員を派遣、事故防止の環境づくりにも有効!

介護給付適正化は、給付の効率化とサービスの質の向上を目的とした市区町村の事業ですが、この事業のうち、福祉用具専門相談員が大きな役割を担うもの、それは「福祉用具購入に係る利用者宅訪問調査」である。福祉用具について適切に提案・使用されているか、利用者が生活をおくる上で改善すべき点はないか。これらの調査では、本会が普及に努めている"モニタリング"の姿勢が大きな意味をもっている。

"モニタリング"は、福祉用具による事故防止にも有効であることからも注目されており、将来われわれ福祉用具専門相談員の最も重要な業務になる可能性があるといっても過言ではない。

世田谷区(東京都)では、福祉用具専門相談員のモニタリング能力に注目し、平成22年度から介護給付適正化事業をすすめている。調査員として派遣された本会東京ブロック会員からみた訪問調査とは、どのような現場だったのか。そして、何に気づき、どう感じたのか。調査事業への参加実績に基づいて話を聞いた。

 
世田谷区の調査活動
世田谷区では、介護給付事業の一環として、平成21年には「住宅改修に係る利用者宅訪問調査」、平成22年度には「福祉用具に係る利用者宅訪問調査」を実施し、後者では本会が調査員の派遣を受託した。 本会東京ブロック会員を調査員として派遣し、年間50件の調査実績をあげた。
区の担当職員、ケアマネジャー、福祉用具販売事業者とともに利用者宅を訪問し、福祉用具の利用状況を調査・確認、区担当者が行う助言や指摘について技術的な補助を行っている。
 
福祉用具に関する画期的試み全国に先駆けてスタート

「福祉用具販売に関するこのような適正化の調査は、私が知る範囲では初めてですし、おそらく全国的にもこれまでなかったのではないでしょうか」と話すのは水越良行氏。水越氏の担当地域でもある世田谷区は東京都の中でも被保険者のボリュームが大きい地域。そういったことも考え合わせ、考え方や取り組み方として評価できる、いい流れだと感じたという。「先進的な保険者だな」と。

同氏は福祉用具貸与事業者の課題の一つに、利用者やケアマネジャーに対しての対応やサービスの質についての差が表に現れにくいことをあげる。事業者側の努力がなかなか理解してもらえない現状。この問題にも、今回の調査は大きく関係してくるのではないだろうか。

「福祉用具の選定、使用状態のチェックというのは本来、非常に重要なものです。何が、どう必要なのかを適確に判断し、福祉用具を選定して、正しい使用のためのセッティングをする。合わない福祉用具、間違った使い方は危険でもあり、利用者のためにもなりません。保険者側が、このようにはっきりとした形で調査し、指導・助言する仕組みがスタートしたのは、非常に良い動きだと思います」(同氏)。

 
現場の把握が生む利益。利用者のためにもケアマネのためにも事業者のためにも
水越良行氏水越良行(みずこし よしゆき)氏
(株)ヤマシタコーポレーション 府中営業所 主任。キャリア10年

――水越さんが調査員としてうかがった中には、選定上、疑問と思うような給付対象、状況はありましたか。

水越 ◆そういうものはありませんでした。ただ、メーカーに提言すべきポイントが出てきたというのはありましたよ。

バスボードなんですが、ターンテーブルで方向転換をしてそのままスライドするもの。使いこなすと便利ですが、スムーズに動きすぎるんです。その動きの点から使い方には特に注意が必要な製品なのです。ターンテーブルの部分はボード本体に固定されていないため、簡単にはずれます。ご利用者やご家族がそれらの特徴について、導入時にしっかり説明を受けていたのか、ということはチェックポイントですね。

――製品を取り替える必要性はなかったのですか?

水越 ◆「スライドする」というのがこのご利用者にとってのポイントだったんです。ちょうど身体介護でヘルパーさんがいらしていて、「実際に入浴介助時に使うのは私だから」と、活発な意見交換ができたのは収穫でしたね。

そのまま継続して使用していますが、調査が入ったことによって、改めて注意を喚起する、第三者の目でみたチェックポイントをお伝えする、助言することができました。

――何かあったらすぐに別のものに取り替えるということではないんですね。

水越 ◆必要なものならば、改めて使用する際の注意を促し、安全に使えるような配慮をする。それが調査員に求められている役割だと思います。

――不適正なもの、というわけではないと。

水越 ◆車いすの付属品であるクッションが単体でレンタルされているということがありました。通常のいす用クッションとして使用していたんです。生活の利便という点ではいいと思いますが、介護保険制度におけるレンタルとしては不適正ですよね。事情を聞いてみたら、ケアマネジャーさんが特に意識していなかったということでした。

――それでは、その福祉用具はどうなるのでしょうか?

水越 ◆区担当者から、本来どうなのかを説明し、ご理解いただくことになるんだろうと思います。どう対処するかは保険者の判断でしょうから、その後の取り扱いは残念ながらわかりません。その状況がおきた原因はさまざまでしょうが、提供した事業者の知識あるいは意識が足りなかったということが多いのではないでしょうか。

本山秀昭氏本山秀昭(もとやま ひであき)氏
(株)やさしい手 住環境事業本部。キャリア6年

「行政の方には、ケアマネジャーさんに福祉用具導入についての制度等を助言するのも福祉用具のプロである福祉用具専門相談員の仕事だと言われました」というのは、本山秀昭氏だ。

――本山さんが調査員としてうかがった中には、特に問題になりそうな給付対象、状況はありましたか。

本山 ◆調査にうかがった中では、目標の達成度はほぼOKでしたが、その場でトイレの座面高の調整を行ったケースがありました。ポータブルトイレからの立ち上がりが少しつらそうだったんです。おそらく初期設定のままの高さだったんでしょう。少し高くすると立ち上がりやすくなりますよ、ということで調整させていただきました。それと合わせて、立ち上がり支持用手すりのすべりどめの位置が適切でなかったため、それも直しました。販売事業者も同席していますから少し言いにくい面はありましたが。こちらは途中でずれてきてしまっていた可能性もありますね。

――福祉用具の取りつけ方がまちがっていたものがあったということですが。

本山 ◆ レンタル品もあわせて確認したところ、"たちあっぷ"のベース部分が表裏逆に取りつけらていた、というケースがありました。本来固定されて動かないはずのものなのに、きちんと固定できず危険な状態でしたので、指摘し、セッティングし直させていただきました。

――ご利用者本人は何かおかしいと、気づかれていましたか?

本山 ◆特にここが、とは思われていなかったようです。提供する側のモニタリングあるいは設置後のチェックが不十分だったのではないでしょうか。

 
行政と現場担当の専門職がともに行う調査の意識

通常、区の担当部署の職員といえど、よほど特別な案件でない限り、現場に行く機会はないと思うのだが。  「例えば、給付係の方だと、書面審査だけなので、給付決定後の状況を見たいのではないでしょうか」とは本山氏。また、調査員としての現場では、「福祉用具専門相談員としての基本は同じはずだが、第三者的な目でみると『こういうふうなとらえ方があるのか』と思うこともあれば、反面教師的な部分に気づくこともあり、いろいろな意味で勉強になる」という。

「この場でケアマネジャーさんにも新しい発見があってほしいです。『ああ、こんな要望があったのか、こんなふうに思っていたのか』など。いままでうかびあがってこなかったニーズが発見できる場にもなるといいですね」とは前出の水越氏。「調査なので」というと利用者や家族から、あえて言えば…といままで出てこなかった意見がとび出ることもあるそうだ。

調査の業務分担では、「介護保険の制度やご利用者の疾患のことなどについては、区担当者の方の領域。一方、福祉用具を導入する際に大切な商品の特性などについては私たちの領域として分担し、区担当者の助言・指導のお手伝いをしています。車いすひとつとっても、どういう目的で、どういう利用者像で、どういう使い方でといった細かいところこそが"適正な給付"には重要なのだろうと思います。そこは専門職であるわれわれの出番です」(同氏)。

また、通常同業他社の方と利用者のところで一緒に仕事をすることはないため、他事業所の考え方などを知ることも勉強になるという。普段自分の事業所で扱っている商品以外について、使用現場でその特性などにふれるチャンスでもある。「理想を言えば、福祉用具専門相談員はすべての商品の特徴を知っているべき。うれしい機会ですね」と頼もしい。

 
今後の展開を考える福祉用具専門相談員の約割とは?【アンケート結果】

今回、利用者宅訪問調査に派遣された会員にアンケートを募った結果を以下に掲載する(抜粋)。現在、福祉用具専門相談員が、調査員として保険者の介護給付適正化事業に参加しているのは、世田谷区のみ。しかし、より"適正な"介護給付が求められる今後、その機会は他所にも及び、また増えてくるだろう。福祉用具専門相談員には、何が求められ、何ができるのか。そして、どのように関わっていくべきか。個人として、事業所として、協会として、業界としての、今後の方向性について考えるきっかけとしたい。

その他の問で多かった回答は? ●訪問前に必要な打ち合わせ
時間は「10 分」程度で、主な内容は「選定理由の詳細確認」と「ご利用者の状態確認」。
●調査に必要な時間
単品調査で「15 分」以上、複数調査で「40 分」以上。購入・レンタル混在調査では「30 分」以上から「60分」以上の間で意見が分かれた。
●福祉用具専門相談員として重視していること
「利用環境の整備」が「サービスの適正化」を上回った。3位は「適切なサービスの普及・啓発」。

 
世田谷区講演会「介護給付の適正化と福祉用具訪問調査の役割」
11月25日、「介護給付の適正化と福祉用具の訪問調査の役割〜『個別援助計画』義務化の動向を見据えて〜」と題し、世田谷区主催の講演会が開催された。講演会では、世田谷区から「介護保険福祉用具購入に係る訪問調査(以下、「訪問調査」)」(※注)に関する説明等が行われたほか、実際に訪問調査に同行した調査員が2名招かれ、訪問調査の体験談が語られた。また、本会の山本一志事務局長が、福祉用具に関して、厚生労働省の来年度の制度改正の動向について講演を行った。
開会挨拶を務めたのは、世田谷区・介護保険課長の吉岡郁子氏。受給者の増加や給付パターンの多様化などによる保険料増加の要素を指摘し、給付の適正化の必要性を述べた上で、「本講演会の内容を、参加した皆様が業務に活かし、世田谷区の介護保険事業が適切に、そして活発に展開していくことを願っています」と挨拶を述べた。
世田谷区からは、まず村井真人主任主事が介護保険福祉用具における書類申請時の注意点を述べた。村井氏は、申請書類の「福祉用具が必要な理由」について、「ご利用者の身体状況、福祉用具の利用環境、商品の選定理由等詳細に記入がない場合、訪問調査の対象となることがある」と言及した。また、小金井恵主事からは、訪問調査についての話が行われた。調査対象の選出について、「同一品目の再購入、理由が不明確、部品のみの購入、高額、使用状況等の確認、身体状況から適切かどうか疑義を感じる等が見られた場合」と説明があった。
調査員として体験談を語ったのは、ふくせん会員の本山秀昭氏と水越良行氏。「悪質なサービスを行っているケースは見られないが、危険な使い方をしているケースはある」とは本山氏だ。調査員という第3者の目線が入ることで気づきがあり、事故の予防にもつながっているようだ。また、「介護の現場では横のつながりが取りにくい。調査を通して他職種と意見交換できるのは非常に意義があり、福祉用具専門相談員としてスキルアップにもつながる」とは水越氏。訪問調査をしっかり自分の仕事に活かしているようだった。
左から、山本氏、水越氏、本山氏
講演を務めた本会・山本事務局長は、福祉用具貸与サービスについて定期的な訪問によるモニタリングの重要性を訴えつつも、「販売品まですべて網羅するのは無理がある。レンタル品は事業者がチェックし、販売品は訪問調査でチェックする、という役割分担ができれば」と、販売品の確認の機会となる世田谷区の訪問調査事業の貴重さを語った。
司会を務めた若狭明子係長(世田谷区)は、「『援助を必要とするすべての方が適切な福祉サービスを受けられるまち、世田谷』の実現を目指し、ケアマネジャー、福祉用具貸与事業者の皆様には今後も協力をお願いしたい」とし、閉幕とした。
 
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